「なんの。モデルがいいからな。彼女に似合うドレスをイメージしただけさ」

 そう言ってリオネルは美鈴の前に進み出ると彼女の手を取った。

「……いかがかな? ミレイ嬢」

 大きな姿見の前まで手を引いて進みながらリオネルは美鈴の横顔を覗き込む。

 答えは、彼女の表情を見れば明らかだった。

 鏡の中のドレスに身を包んだ美鈴の頬は桜色に染まり、瞳はきらきらと輝いている。

「サイズもピッタリだわ……。リオネル……ありがとう。このドレスをいただくわ」

「よかった。気に入っていただけたようで」

 片膝を曲げ(うやうや)しくリオネルが美鈴に礼をしてみせる。

 そのままさり気なく美鈴の肩に手を回し、耳元に唇を寄せると、他の二人には聞こえないほどかすかな声でリオネルは囁いた。

「……ドレスをデザインした『褒美』として、俺の願いを一つ聞いてほしいんだが……」