目の前で広げられた瞬間、心が躍るような気がした。

 上等のモスリンによって爽やかな夏らしい色合いを表現したレモンイエローのドレス。

 繊細なチュールレースを襟元、手首にあしらった上品で華やかな装い。

 胸元にはごく薄いラベンダー色がアクセントのチェックのリボンが結ばれ、同色のベルトが腰に(まつ)わっている。

「……素敵……」

 可憐なドレスに目を奪われて、唇から思わずこぼれた美鈴のつぶやきを、リオネルが聞き逃すはずはなかった。

「だろう? ……君に似合うと思ったんだ。早速、着てみないか?」

 リオネルに肩を抱かれ、試着室に(いざな)われた美鈴は、ジャネットに手伝ってもらいながら仮縫いのドレスに袖を通した。

「サイズもあっているし、何よりお嬢様にとてもお似合いです」

 ドレスは身体に完全にフィットしており、しっかりと絞ったウエストから優雅に流れるスカートの襞までもが美しい。

「この間の舞踏会のドレスといい……。見事なもんだ。惚れ惚れする出来だな……!」

 試着室から出てきた美鈴を見て、テオドールも感嘆の吐息を漏らした。