昨日に引き続き、今日もパリスイは好天に恵まれていた。

 眩しい日差しが降り注ぎ、街路樹から濃い影が伸びる夏の午後。

 夏の外出着に相応しい、薄織の爽やかな白ドレス着替えた美鈴は、ジャネットと一緒にリオネルとの待ち合わせ場所に向かっていた。

「住所からいけば、この辺りですわね……」

 手元の住所を記した紙と馬車の窓から見える街並みを交互に眺めつつ、ジャネットが呟いた。

 ゆっくりと進んでいく馬車の窓から見える通りに面して軒を連ねる商店の店構えは見事なものだった。

 服飾関係の店が集まる界隈らしく、道に面したショーウィンドウのガラスは磨き上げられ、美しく飾り立てられている。

 華やかな通りの中でもひときわ目を引く、象牙色の石材を外壁に使った建物のアーチ状の入り口から一人の男性が車道に躍り出た。

「ま……! リオネルさまったら」

 行き過ぎようとした馬車を止めたのはリオネルだった。

 ルクリュ家を訪れる際のややフォーマルな装いとは違い、今日はシャツにベストを着けただけのラフないで立ちだ。

 シャツの袖は肘までたくし上げられており、逞しい腕が剥き出しになっている。

「お待ちしておりましたよ、ミレイ嬢」

 馬車の戸を開き、美鈴に手を差し伸べながら、リオネルはいつもの調子で話しかけてくる。

「こ、こんにちは……昨日は、どうも……」

 彼の姿を見た瞬間に昨夜の出来事を思い出してしまった美鈴はリオネルの顔がまともに見られなった。

「ありがとう……ございました。リオネル」

 その言葉を聞いた瞬間、リオネルの表情がふっと和らいだ。