胸を撫でおろしている子爵の隣に座っているロズリーヌ子爵夫人がにっこりと微笑みながら提案した。

「せっかくだから、リオネルにお願いして……あの子なら、直ぐに素晴らしい一着を仕立ててくれるに違いないわ」

「え……リオネルに、ですか?」

 思いもよらぬところでリオネルの名が出たことに、美鈴はたじろがずにいられない。

「いい考えだ! 早速リオネルに連絡しよう。昨晩の礼もしたいしな」

「ジャネット、お願いできるかしら……?」

 子爵夫人がジャネットに呼びかけるとしっかりものの彼女は機敏な動きで夫人の隣に進み出て指示に耳を傾けた。

 婚活のためとはいえこんなにすぐに彼に会うことになるなんて……!

 しかも、伯爵家の御曹司との見合いのための衣装をリオネルに頼むことになるなど、予想もしなかった事態だ。

「承知しました、奥様。直ぐに行ってまいりますわね」

 ジャネットの後姿を見送りながら、美鈴は今度こそ本当に途方に暮れていた。