自分では全く意識していなかっただけに、ショックを受けた美鈴は恐る恐るジャネットに尋ねた。

 美鈴の真剣な様子にジャネットはつい真顔を崩して噴き出してしまった。

「お嬢様ったら……!」

 目尻に涙が浮かぶほどにひとしきり笑った後、ジャネットは美鈴の身支度に取り掛かる。

「大丈夫ですよ。いつも通り、とてもお綺麗です。それよりも、聞かせてくださいな。昨夜どんな素敵なことがあったのか」

 バスタブに湯をためる間、ジャネットは鏡台の前に座った美鈴の髪を丁寧に梳きながら、淡々と語られる『昨夜の出来事』に耳を傾けた。

 適度な相槌に的確な質問。

 元いた世界でもジャネットほどの聞き上手にはついぞ出会ったことがなかった。

「それにしても、昨夜のリオネル様はちょっと様子がおかしかったですわね」

 ふとジャネットが漏らしたひと言に胸がドキリと高鳴る。

 なるべく平静を装いながら美鈴は後ろのジャネットを鏡越しに見つめた。

「……わたしには、いつもと変わらないように思えたけど。例えば、どこが?」

 もちろん、昨日リオネルの家に寄ったことはジャネットには伏せてある。

 それでも生来勘がよくリオネルとの付き合いも長い彼女には何か思うところがあるようだった。

「いえ、わたしには何だか……。まるで何か反省をしているような、しょんぼりした様子に見えたので」