「お目覚めですか? ミレイお嬢様……」

 ジャネットの軽やかな声がまだ完全に夢から覚め切っていない頭をしゃんとさせてくれる。

「……おはよう? ジャネット」

 舞踏会から帰宅した後、帰りを待ってくれていたジャネットに手伝ってもらいながら、身支度をしてベッドに潜り込んだところまでは覚えている。

 疲れのせいかすぐに眠りにおちることができたのは幸いだったけれど、短い夢の連続で熟睡することはできなかった。

 初めての舞踏会で気分が高揚していたせいだろうか。それとも……。

 帰りにあんなことがあったから……?

 あの後、リオネルはあくまで紳士的に美鈴を屋敷まで送り届け、ジャネットに彼女を託した。

 その時、美鈴の片手をとり、遠慮がちに軽くキスを落としてから「また、近いうちに」と小声で言い添えて彼は去っていったのだった。

 いつものリオネルらしくない振る舞いになぜか肩透かしを食らったような気分になったのが自分でも不思議だった。

 昨日の出来事を思い返しながら美鈴がボンヤリとしていると、見かねたようにジャネットがベッドの傍まで進んできて声をかけた。

「ふふふ、また、難しい顔をして!」

 ジャネットが茶化すように美鈴の前で腰に手を当て、ベッドに実を起こしたままの彼女にグイと顔を近づけた。

「いけませんわ。お嬢様。せっかく晴れの舞台を踏んだというのに、そんな仏頂面をしていては」

 ジャネットにそう言われて思わず美鈴は自分の頬に手を当てた。

「わたし……そんな不機嫌そうな顔してた?」