リオネルの瞳が細められ、彼の片手がそっと美鈴の白い頬を撫でた。

 触れた頬から美鈴の熱がリオネルの指先に伝わってしまう。

 ただでさえ先ほどからリオネルに捉えられている瞳は美鈴の意志とはまったく関係のないところで潤み、チラチラと瞬く燭台の灯りを灯して輝いている。

「ミレイ……綺麗だ、どんな貴婦人も君には敵わない」

 瞳をすっと閉じかけながら、リオネルは柔らかく美鈴の頬を抑えた。

 ゆっくりと、窺うように顔を近づけ唇を合わせようととしたその時、ぽつりと温かい水滴が彼の頬を濡らした。

「……ミレイ」

 驚かせないようにゆっくりと半身を起こし、態勢を整えると彼女を抱え上げて座らせる。

 さきほどまで緊張に慄えていた美鈴の身体は意志のない人形のようにされるがままだった。

 ひそめた眉、閉じた瞳の目じりから涙があふれて頬を伝い落ちていく。

 声を上げずに、彼女は静かに涙を流していた。

 しばらくその姿を眺めた後、リオネルは躊躇いながらも美鈴の両手を自らの大きな手ですっぽりと包み込んだ。

「ミレイ、これだけは覚えておいてくれ」

 半ば懇願するような表情でリオネルが呟く。

「俺は、君の嫌がることは絶対にしない――。……怖がらせて悪かった」