沈黙が訪れてからどれくらいの時が流れただろうか……。

 できるだけ意識しないように努めても、密着した厚い胸からリオネルの熱と鼓動が伝わってくる。

 身体に回された腕は鋼のように強く、長椅子に身体を半ば横たえているリオネルに覆いかぶさるような態勢のまま、美鈴は身じろぎさえできない。

 リオネルは抱きあげるようにして美鈴を自分の身体の上に乗せてしまっているので、今、美鈴の眼前にあるのは真っ白なシャツと寛げた胸元からのぞく鎖骨だった。

 まるであやされている子供のように頭を片手で抱えられ、リオネルの胸に耳を当てていると彼の心臓の鼓動が聞こえた。

 ゆったりと規則正しいそのリズムを間近で聞いていると

「君は、俺のことを信頼している……そうだろ?」

 ポツリと漏らされたその言葉に思わず美鈴は頭を上げてリオネルの顔を見た。

 その瞬間、リオネルはいともたやすく美鈴の視線を捉え、畳みかけるように呟いた。

「……そうでなければ、こんな夜中に俺の部屋に来るはずがない」

 濃い睫毛に縁どられたグリーンとブラウンが混ざり合った夢のような色合いの瞳がじっとこちらを見返している。

 美しく隆起した鼻梁の下の、薄く形の良い唇がもの言いたげに薄く開かれている。

「俺には、わかる。君が俺のことを憎からず思っていること……魅かれはじめていること」