にべもなくそう言い返すと、リオネルはふっと息を吐いてから先ほどまで美鈴が座っていた長椅子に腰かけた。

「紅茶が、冷めるぞ。こっちへきて座ってくれ」

 問いかけには答えずにはぐらかすように紅茶をすすめてくるリオネルに不信感を募らせながら美鈴は長椅子の横を通って向かいの肘掛椅子に向かって歩を進めた。

 その時。

 長い腕が長椅子から伸び、美鈴の手をしっかと掴んだ。

 驚いて振り返るとリオネルは眩しいものをみるように目を細めてじっと彼女をみつめていた。

 さっきまで微笑みを湛えていた口許は、いまはギュッと固く引き結ばれている。

 そのまま子猫を抱え上げるように楽々とリオネルは美鈴を手元に手繰り寄せその腕の中に捉えてしまった。

 気が付けば苦し気に眉根を寄せたリオネルの精悍な顔がすぐ目の前に迫っている。

「なっ……!何を……」