「伊集院さん、ちょっと良いかしら?」

放課後になり、麗華が教室で本を読んでいると、一人の女の子が麗華に声をかけた。彼女は、田辺 姫香(たなべ ひめか)。

麗華はニヤける姫香を見つめ、「何?」と問いかける。

「あなた、一人で喋ってたよね?気持ち悪いんだけど!」

他のクラスメイトに聞こえるように、姫香は言った。その一言でクラスメイトの視線は、麗華に行く。

「何かの見間違いじゃない?」

麗華が落ち着いた声で言うと、姫香は「見間違いなんかじゃない!私、見たもん!」と返した。

「そう……」

麗華はそう返すと、立ち上がる。それを姫香は止めた。麗華の冷たい目が姫香に突き刺さる。

「冷めた目で姫香ちゃんを見ないであげて……っ!麗華さんって、本当は目立ちたがり屋だったんだね」

「ち、違う……」

「何が違うの?姫香ちゃんよりも目立ちたくて、誰もいないところで一人で喋ってたんでしょ?」

「違う」

麗華は、クラスメイトの言葉を否定しながら教室を飛び出した。