帰りの車で、私は、樹さんに聞いた。


『本当に、これで良かったの?』


『…俺には、沙也加を女性として見る気持ちは1ミリもない。ヘタに近くにいて、あいつの気持ちを惑わせるより、キツいかも知れないが、キッパリ離れた方が、あいつのためにはいい。俺に執着しなければ、沙也加なら、新しい相手が必ずすぐに見つかる』


運転しながら、答える樹さん。


そうだよね…


あんなに素敵な人なんだもん、周りがほっとかないよ。


本当に綺麗だったな…


しかも、お金持ち。


あんな風に生まれたら、きっと、お父さんが言ったように、世界はもっと広く見えるのかも知れない。


私なんて…


狭い狭い世界で、何とか頑張って生きてるって感じだもん…


それぞれの環境が違うんだから…仕方ないけど。


私も、もっと、いろんなところに目を向けなきゃ。


成長…したいし。


マンションに着いて、樹さんが私にソファに座るように言った。


『柚葉…』