(やばいっ…!とてつもなくやばい!!) 目の前の北村 圭が鬼に見える。 なのにククッ、と笑ってやがる。 そして逃げ場を失った私にヤツは手を伸ばした。 「なに、すんのよ…」 ヤツは私の左目に親指を宛てて、クイッと横に動かした。 「ほら、泣いてたでしょ?指が濡れちゃった」 ポカンとする私を見て笑った。 「っ……」 その顔は、悔しいほど綺麗で。 思わず目を逸らしてしまった。 「あれ、言い返して来ないの? 絶対ギャーギャー言ってくると思ったんだけど」