蒼司「…美味い。」

『良かった…。』



一口食べてから頬を軽く綻ばせ、そう言う彼に少しホッと息をつく。

人に手作り料理を振る舞うのは久しぶりだ、自分の味付けしか出来ないものだから口に合わなかったら…とまで考えていたが、どうやらその心配はなかったようだ。



蒼司「料理が上手いのだな。」

『まあ昔からやってますから。』

蒼司「何故だ?親はしなかったのか?」

『ん、や、親は免許持ってるわけでもないのに一流って言われるくらいには上手かったですね。』



そう言いながらスプーンを口に運ぶ。

すると彼は少しバツが悪そうに僕の方を見てくる。



『…何ですか?』

蒼司「…亡くなっているのか。」

『何故その発想に至ったのか教えていただいても?』



少し驚きながら問い掛ければ、彼は答える。



蒼司「…過去形、だったからな。」

『ああ…そういう意味じゃなかったんですけど。』



そう言う意味の過去形だったわけではなかったのだが、どうやら勘違いをさせてしまったらしい。



『生きてますよ、ちゃんと。』

蒼司「そうなのか…?」

『はい。』



本当に、ちゃんと…立派に生きている。