守る理由。

「怖いことは何もないから。」

『…怖いです、何が起こるかも分からないのに。』



今までほとんど返事しなかったのに突然返事しながらか、少し驚いた顔をする彼女。

でもその顔は…すぐに優しい微笑みへと変わった。



「確かにそうよね、突然知りもしない相手から意味の分からないことを、ありもしないエレベーターの中で頼まれるんだから。」



自分でも分かってる、とでも言いたげに薄く微笑む彼女は…どことなく悲哀に満ちていて。

見ている僕まで悲しくなってきてしまう。



「…でもね、これは本当に…あなたにしか、出来ないことなの。」

『…何で…』

「今はまだ分からないと思う…でも、必ず分かるから。」



根拠なんてないはずなのに…その言葉はとても力強くて。

本当にそうなのかな…とさえ思えてくる。



「…それに、きっと彼なら…あなたが望んでいることを叶えてくれるはずだから。」