そして腕を引っ張られて、半ば強引に後部座席に乗せられた。


「は、はい」


座り心地のいい高級な座席に腰掛けると、なんだか不思議な気分だ。


いつもなら、満員電車に揺られて登校するのに。こんな贅沢が許されるんだろうか。


「あの、伊織さま、話ってなんでしょうか?」


「話?ああ、話か、そうだ、学校では結婚のことはしばらく伏せておこう。その方がつむぎも 普通に過ごせていいだろ?」


「はい、ありがとうございます」


なぜだか彼は私の隣にピッタリとくっつくように座っていて距離感がおかしい。


長身の彼は、上から私を見下ろして肩に手を回してきた。


あれ?どうしたんだろ。どうしてこんなに近くに座るの?


座席はゆったりしているんだから、こんなに詰めてキツキツに座らなくてもいいのに。