この父の提案は断固拒絶して、私はこのままお屋敷での仕事を続けるつもりだった。


伊織さまとの結婚生活がどんなものになるのかなんて、私には遠い話過ぎて現実感がなかったからかもしれない。


この時の私には、伊織さまがそういうつもりなのだったら逃げ隠れしなくても問題ないような気がしていたんだ。


だって私のことは婚約を断るためだけの口実ってことなんだったら、もう用はないだろうし。


これ以上私なんかに関わってきたりしないだろうなって甘く考えていた。


だから2か月間の結婚生活なんてどうにか乗りきれるんじゃないかって。


その時はそう思っていた。