多分、母は今の時間は家にいるはずだ。このお屋敷から5分とかからない距離だから
南さんはあの後すぐに我が家へ向かったのだろう。


父には南さんから事後承諾のような電話があったらしい。


「つむぎ、すまん。この結婚にはどうも奥様も大変乗り切らしくて私も断り切れなかったんだよ」


「そっか。奥様が。それなら仕方がないね」


まだ頭がぼんやりしていたせいかもしれないけど、父がこの結婚にノーを言えなかったと聞いてもさほどのショックは受けなかった。


「お父さんに考えがあるんだ、2ヶ月後に旦那様が大きなプロジェクトを終えられて一度日本へ帰ってくる。

旦那さまさえ帰ってきてくれたら、伊織さまをおいさめしてくれる。それまでの辛抱だ」


「え、それってどういうこと?」


つまり、2ヶ月後には別れられるってこと?


今、新海家の当主である伊織さまのお父さまは海外で重要な仕事をしていてお屋敷を長らく留守にしていた。


確かに伊織さまや奥様が決めたこの結婚をくつがえせるのは旦那さましかいないだろう。