「イオくん」


目を閉じながら独り言のように呟いた。


電車のガタンって揺れる音でかき消されてしまうくらいの小さな声で。


「ありがとう」


「どうして?」


だけどその問いかけに聞こえないふりをした。


直後、私の頭を優しく撫でてくれたから涙がこみ上げてきた。


ごめんね、イオくん。


わがままばっかり言って。


ごめんね、私のせいで。



連れ出してくれて、ありがとう。

一緒にいてくれて、ありがとう。



拳を握って必死で泣くのをこらえていた。


ここで泣いたらあまりにもズルいと思うから。


だから、私はその時がくるまでなるべく笑っていたかったんだ。


この旅の終わりがくるその瞬間までは。