一途な御曹司と16歳の花嫁

「坊ちゃんいけません、豆腐ですよ、豆腐」


わけのわからないことを鋭い声色で言うからびっくりした。


伊織さまは、ハッとしたように南さんを見て小さく頷く。


「ああ、悪い。怖がらなくていい。さあ、食べて」


そう言って伊織さまは明らかな作り笑いをして席に着くから、少しホッとした。


豆腐ってなんのことだろう、まさかとは思うけど女は豆腐のように壊れやすいから優しく扱いなさいとかいう意味の忠告なんだろうか。


よくはわからないけど、とにかく助かったみたいで良かった。


伊織さまの機嫌をそこねないかとても不安だった。


「は、はい。いただきます」


どうしてだか、さっぱりわからないけど伊織さまは私に凄く気を使ってくれている。


ただ単にからかっているようにも見えないしどうしたんだろう。


見た目にも綺麗なキツネ色のアップルパイを一口食べると、ほっぺたが落ちそうなくらいに美味しい。


外はサクサクで中はしっとりしていて、リンゴも凄くみずみずしい。