「少し話してただけだよ」


普段から女性の視線には慣れている彼は、特別珍しいことでもなかったのかもしれない。


「ふうん、イオくんて意外に嘘が上手いからびっくりした。いろいろ質問されてたのに、全然動じずに答えてたんだもん」


「そうかな、普通だろ?
でも違う自分になったような気がして、面白かったかもな」


人差し指で頬をかきながら笑う彼の横顔は小憎たらしいほど綺麗だ。


「あ、ひどーい、やっぱり楽しんでたんだ」


「違う違う、ちょっとでも怪しまれないように気をつけてただけだよ」


「私がイオくんのことお兄ちゃんって呼ぶたびに笑いをこらえてたでしょ?」


「バレてた?つむぎの演技がおかしすぎて腹が痛かった」


「もうっ、だって必死だったんだもん」


ぷうっと頬を膨らませて彼を睨むけど、おかしそうに笑われた。