そして、彼を好きだった記憶を封印してしまったんだ。


初めから好きにさえならなければ誰も傷つけず、自分も傷付かずにすむから。


私のやり場のない苦しみに目の前の彼は、何も答えてはくれない。


ただ、悲しそうに私を見ている。


そして、手を伸ばした彼は優しく力強く抱きしめてくれるだけ。


ああ、やっぱり無理なんだなって思った。


こんな無茶苦茶なお願いをいくら彼だって承服できないだろう。


その時、イオくんは静かに口を開いた。


「いいよ、つむぎ」


「イオくん」


「2人で行こう」


信じられないくらい嬉しい言葉に体が震えた。