私は彼から顔を背けて、ぐっと唇を噛む。


「つむぎ?」


不安げな声は、私を気遣ってくれるものだってわかっているのにどうにもならない。


「つむぎさん、私を覚えているかしら?たしか以前何度かお会いしたわよね?」


「は、はい。ユリナ様」


仕方なく私は彼女に向き直る。


「良かったわ、あなたが会いに来てくれて。
伊織さんはずっとつむぎさんのことを気にかけていらしたから」


「はあ」


やだ、もうこの場から消えてしまいたい。


彼女はこんなに優しく微笑みかけてくれるのに、私は上手く笑うことすらできない。


心がカチコチに凍りついたみたい。


いま口を開いたら、トゲトゲしい言葉がでてしまいそう。


「あ、心配なさらなくて大丈夫よ。私はいまでは伊織さんの友人だから」


「でも」