一途な御曹司と16歳の花嫁

「ほら、お祖母様の部屋でよく2人であそんだじゃないか」


そんな風に言われても、確かな記憶がなくて目線を落とした。


子供の頃、新海家のおばあさまのお部屋で、本を読んでもらったり折り紙を折ったりして遊んでいただいていた。


おばあさまは子供が好きで面白くて優しい方だったから私も凄くなついていた。


庭のバラの花を花瓶に生けてお部屋に持っていくことは小さな私のお仕事でもあった。


だけど、そのおばあさまの部屋に彼はいただろうか。


どうしよう、思い出せない。


適当に話を合わすなんて芸当もできそうにない。


私の反応が悪かったせいか、彼は不安そうに私の顔を覗きこむ。


「つむぎ?」


「ごめんなさい、あまり覚えていなくて」


正直に謝ると、目の前の伊織さまは明らかにガッカリしたような表情を浮かべた。


「嘘だろ、覚えてないのかよ」


独り言のように呟いて肩を落としてしまわれたので驚いた。


そんな風に言ってもらえるほど私には、彼と一緒に過ごした時のこまかな記憶が思いだせない。


父から聞かされていた程度の認識しかなくて、彼と幼なじみだなんていう甘酸っぱい思い出など全然ないんだ。