「そうだよね、ほんとそこまですることないのに。伊織さまが可哀想だよ」


「こんなのロミオとジュリエットじゃん」


サキちゃんは興奮したみたいに机をドンッて叩いた。


「ロミオとジュリエット」はたしか悲劇的な結末で、終わったような。ってそんなこと気にしても仕方ないんだけど。


「もうどうしたらいいかわからないよ」


ハアッとため息をついたその後もサキちゃんにいろいろとモヤモヤした胸のうちを吐き出せて少し気持ちが軽くなった。


こんな時、愚痴を聞いてもらえるだけでもありがたい。


お屋敷に閉じ込められているイオくんも、こんな風に本音で話を聞いてもらえる存在がいれば少しは気が晴れたりするかもしれない。


今頃、彼はどうしているだろう。


そう思うと心配になって、やっぱり会いたい気持ちが膨らんでくる。


誰にも合わせてもらえず1人寂しく過ごしてるのかも。