いきなり、伊織さまに顔を覗きこまれてビクビクしながら答えた。


そうか、緊張しててわからなかったけど、どうして伊織さまは私の好きなものを知ってるのだろう。


不思議だ、子供の頃ならともかくここ最近では、彼とプライベートな会話はあまり交わしたことがないはずなのに。


「アップルパイは、昔から好きだったろ?ほらおばあさまがよく作ってくれたのを一緒に食べたよな」


彼は昔を懐かしむような目でしみじみ言う。


あ、そうか。私は小さい頃彼とは少しは関わりがあったのかな。


確かに、今は亡き彼のおばあさまには子供の頃、凄く可愛いがっていただいた記憶がある。


それなのにどういうわけか、伊織さまと遊んだという記憶があまりない。


「幼馴染ってやつだよな、俺たち」


ニコッと綺麗な笑顔を向けられると困ってしまう。


「あ、いえ、それは」