「私といたらイオくんが・・・大切なものを・・・失くしちゃうのかな・・」


あの言葉が耳から離れない。


怖い、苦しい。自分が傷つけられるよりもずっと。


おばあさまの部屋で、バイオリンを弾いてくれたあの少年の日のイオ君が浮かんですぐに消えていった。


「違う、つむぎはわかってないんだな」


いたわるように強く抱きしめてくれてから、ハンカチで私の顔を拭いていくれた。


初めて直に触れた彼の肌は暖かくて。


「俺はなにもいらない」


ポツリと呟く彼ははかなげに笑う。


「え」


「つむぎさえいれば俺はそれでいい」


「イオくん」


「いざとなったら、全て手放すくらいの覚悟はとっくに出来てる」


その冷たくさえ見える表情は彼の真剣さを物語っていた。


私を選ぶということはそういうことなの?


それほどの覚悟を、犠牲を、あなたに背負わせないといけないのかな。


あなたと私の愛は。


誰も幸せにはできないから?