えっ、どうしたんだろう、伊織さま。もしかしたらもの凄く今機嫌がいいのかな?


けれど彼が私に笑顔を向けてくれるなんて、どうした風の吹きまわしか、逆に少し怖い。


執事の南さんは、席に着かず立ったままだというのに、私は座らされてお菓子やお茶まで振る舞われるのを待っているという特別待遇な状況。


恐れ多いような気がして、すっかり恐縮していたし、伊織さまのさっきの言動や行動にもすっかり怖気付いていた。


「それは気持ちが悪いと思って引いてしまいますよね?つむぎさん」


南さんが、からかうような口調で私に言うと伊織さまはムッとする。


「どうして、気持ち悪いんだよ、南」


「たいして、言葉を交わしたこともない男性が、自分の好みを知っていたら、普通ドン引きするものですよ」


「そうなのか?つむぎ」


「い、いえ、嬉しいでっす。はい」