「へぇ、やっぱり忘れてるんだ。6年ぶりだもんな。だけど、俺は随分君のことは可愛がってやってたんだぜ」


言って彼が私の顎に手をやると、飛び上がりそうになるくらいに嫌な気分になる。


「だけどさー、俺が君を可愛がる度にあのバカが猪みたいに怒ってくるんだよな。
それが、面白くて仕方なかったんだよ」


ククッと笑うそのしぐさは御曹司とは程遠い
下衆ぶりだ。


「あの頃は子供だったから、叩いたりしていじめるだけだったけど、いまの君を見たらもっと別のやり方でいじめたくなっちゃうな」


彼は私を見ていやらしい笑いを浮かべる。


やっぱり私はこの歪んだ醜い顔を知っている。


顎に添えられている手を振り払って、走って逃げようとしたら、髪の毛を引っ張られる。


「キャッ」


「おとなしくしろ」