そして私を正面から品定めするようにジロジロ見て、フッと皮肉げに笑う。


なぜだかわからないけれど、背中がゾクリとして嫌な汗が全身から湧き出してくるような嫌悪感を覚えた。


この人は私を知っている。


そして多分私もこの人を知っている。


そう思った瞬間身の危険を感じて震えがきた。


私の体の中の細胞レベルでこの男は危険だと、警鐘を鳴らしていた。


思わずカートを置いて逃げるように横によける。


「やっぱりつむぎちゃんか、びっくりしたよ。随分と綺麗になったじゃないか。
それにしても伊織のやつ、相変わらずだな。
本家の跡取りともあろう人間が、こんな使用人ふぜいにうつつを抜かして」


彼の冷たい口調は伊織さまと私との関係を知っているようだった。


一体何者なんだろう。


「どちら様ですか?」