それにしても、伊織さまは優しい方なんだな。自分のことも顧みずに私のもとへきてくれたりして。


というか、彼の瞳には私しか映っていないようにも見えた。


自惚れが過ぎるかもしれないけど、ああいうことは初めてではなかった気がする。


ずっと以前にも似たようなことが何度となくあったような。


多分、昔から彼はそうだったんだろうな。


そんなことを考えていたら、後ろから誰かに声をかけられた。


パーティー会場から走って出てきたのは若い男性で、その人はニコッと気さくに笑いかけてきた。


あれこの人見覚えがあるようか気がする。


年齢は20代半ばくらい。


大人っぽい整った顔立ちで、切れ長の瞳。


鮮やかなシルバーのスーツを上品に着こなしている彼は、どこかの御曹司に見えた。