高い鼻に、涼しげな瞳、上品なバラ色の唇、どれをとっても美しいという形容がぴったりな旦那様。


きっと、伊織さまは読書に集中していて聞こえていないだけ。


私のことを、無視しているわけではない・・・はず。


「あ、あのう、伊織さま。私、今夜はやはり、自分の部屋で眠りますね。伊織さまの読書の邪魔をしてはいけないから」


「・・・」


チラとこちらを見た彼の表情は氷のように冷たくて、そしてとても綺麗だ。


だけど今この時、初夜の愛しい妻を見る目では決してない。


「遅いぞ」


「ごめんなさい、準備に手間どっていて」


というのは言い訳で、いざとなったらなかなか決心が出来ずに怖気づいてしまってたんだ。


だけど、それが彼の気分を害してしまったようだ。


ゴミでも見るように私を見てから、はあ、とため息をついた。