「なんだよ、つむぎは焦らすのがうまいな。そんなとろけそうな顔をしておいて」


「だってそれは伊織さまがいろいろと私にするからです」


「いろいろってなんだよ?」


からかうように言うと私のワンピースの腰紐をするりとはずす彼。


「だから抱きしめたりとかそういうことを」


「嫌なのか?」


「・・・」


本当に嫌なら逃げているはず、それをわかっているくせに。


こんな聞き方をする伊織さまはずるいと思う。


だけど、抗議するのも変なので文句も言えない。


無意識に私の手は彼の制服の白いシャツをギュッと掴んでいた。


だってずっと待ってたんだもん。早く帰ってこないかなって思いながら。


自分でも悔しいくらい、彼にドキドキしていて身体が動かない。目の前に彼がいることがこんなに嬉しいなんて。


「そうだよな、誘ってきたのはつむぎの方からだもんな」


「えっ」


誘うだなんて、聞き捨てならないことを言う彼を見つめ返したら余裕そうに笑っている。