「せっかく昔の呼び名を思い出したんだから伊織さまはもうやめろよ」


彼は長い指で私の首筋を撫でながら拗ねたように呟く。


「でも、ちょっと恥ずかしいです」


「2人でいる時くらいならいいだろ?」


「2人きりの時って。でもやっぱり」


ためらっている間にも、彼は私の髪や顔を愛おしそうに撫でてくる。


触れられる度にその箇所がジンジンするような妙なときめきを覚えて。


「もっかい呼んでみろよ、ほら練習」


「はあ」


不思議なもので練習だと思えば気も軽くなる気がする。


「イオく・・ん」


「聞こえない」


「イオくん」


意を決してそう呼ぶだけで、顔から火が出そうで真っ直ぐに彼の顔を見れない。


「つむぎ、ついでにもう敬語もやめろよ」


「そ、それは少しづつで」