「伊織はあまのじゃくで不器用な子だから、つむぎちゃんに誤解されて嫌われたんじゃないかしらって不安だったの。よかったわ2人が喧嘩していたんじゃなくて」


「そ、そんなことは決して」


「2度もつむぎちゃんを失うことがあったらあの子がどうなってしまうか不安で。
伊織はああ見えて繊細な子だから」


「え、2度って・・・」


聞き返そうとしたその時、両開きの立派な玄関ドアがバタッと開いた。


見れば、執事の南さんが書類の束を抱えて出てきた。


いつもビシッとスーツを着ているのになぜだかジャケットを羽織っておらずネクタイもしていない。


袖をまくり上げて、首にはタオルなんてかけている。それに額にうっすら汗をにじませている。


どうしたのかな、力仕事でもしてるのかな?


「奥様、そんなところにいては風邪をひかれてしまいます。早く中へお入りください」