「いえ、違います。そういうわけではなくて」


「お願い、ちょっとだけでもいいから顔を見せに来てつむぎちゃん」


「奥様」


結局、新海家の奥様に泣きつかれるような形になってしまい、今からお屋敷に伺いますと言って電話をきった。


なんだ、そっか。伊織さまからじゃなかったのか。


だけど奥様から電話がかかってきたんだから、行かないと失礼だよね。


うん、そうだよ。


自分に言い聞かせるようにして、急いで制服を脱いで準備にとりかかる。


壁にかけていたクリーム色のワンピースに久しぶりに袖を通した。


あ、そうだ。


鏡を見ていつもよりも少しだけ丁寧にメイクをした。


そうそう下着も。


タンスの1番下の奥にこっそりと隠していた上下揃った下着セットを取り出した。


3日前に親友のサキちゃんと一緒に買いに行ったもの。