「そ、そうか、そうか。さすがは新海家の坊ちゃんだ。道理をわきまえていらっしゃる」


父は、水を得た魚のように伊織さまのことを褒めだした。


さっきまで伊織さまに腹を立てていたはずなのに、娘がまだ汚されていないとわかった途端に感謝の気持ちでいっぱいになっている。


こんなのさすがに滑稽だけど笑えない。


「それに今日からは家に戻っていいとおっしゃっていたし」


「なんだ、そうだったのか」


嬉しそうに布団をもみしだく父は笑顔を見せるから私もホッと胸を撫で下ろした。


よかった、とりあえずは父が気持ちを落ちつけてくれたみたいだ。


父とは対照的に、やれやれと言うように呆れ顔の母。


だけど、あのままだと父の血圧が上がって倒れてしまうんじゃないかとハラハラしたんだ。