本当だ、私らしくない。


いつもの私なら父の言葉を疑いもなく信じて、言いつけを守っていたはず。


今日だって伊織さまとのことよりも父の体の具合を1番に尋ねなきゃいけないのに。


「ごめん・・なさい」


「いいんだよ、つむぎ。この間からいろんなことがありすぎてつむぎ1人に苦労をかけてしまった。この通りだ、すまない」


私に頭を下げる父の背中は小さくて弱々しい。


だから急に申し訳ない気持ちで一杯になる。


「ううん、気にしないで。私こそ大声だしてごめん。ただ伊織さまが少しお気の毒に思えてしまって」


だって、私は彼の真意を疑ってしまったんだから。


「つむぎ、父さんだって伊織さまが憎いわけじゃ無い。あの方は新海家の跡継ぎにふさわしい立派な方だ」


「そ、そう。そうだよね」