「ああ、俺もきちんと挨拶しないとな。電話で結婚の許しをもらっただけだし。つむぎのことをきっと心配しているだろうから、こうして仲睦まじい様子を見せてあげたら安心するんじゃないか?」


伊織さまはそう言って私の手をとりエレベーターの方へ歩き出す。


だけど私はまだすぐには彼の真意が理解出来なくて戸惑っていた。


一体彼は、父に何を話すつもりなんだろう。


父だってなんの連絡もせずに突然伊織さまを連れて来たら驚くんじゃないかな。






病室に入るなり驚いたのは、父が今朝から個室に移っていたことだった。


しかもその個室というのが。


「何ここ、凄い。まるでホテルみたい」


思わず叫んでしまうくらい驚いた。


まるでVIPが使うような広々とした特別室。