一途な御曹司と16歳の花嫁

子供の頃のことだからそんなに覚えていないのも当然なのかもしれないけど。


私自身は覚えてはいなかったけど、父はよくそのころのことを覚えていた。


だから、私と彼との昔の関係を父からそんな風に聞かされてもあまりピンとこなかった。


だけど、優しいところもあったような気もするんだ。得意のバイオリンを聴かせてくれたってことは覚えてる。


私の弟に対しては態度が違ってて、留学先で一緒に暮らしていたこともあって、今でも仲良くしてくれているし、父のことも大切にしてくれている。


一年前に帰国した彼は、見目麗しい男性に成長していたけれど、私に対してだけは冷たかった。


父からは伊織さまは気性の荒い方だから、軽々しく近づいてはいけないときつく言われていた。


だから、私は父のいいつけ通り、彼には極力かかわらないように気をつけていた。