どっちが目上の立場なんだと思うほど、伊織さまの方が堂々と答える。


「ありがとう、新海くん」


けれど遠慮した先生はいつもよりもホームルームを早めに切り上げる始末。


毎年この学園に莫大な寄付をしているらしい新海家の御曹司には先生方も一目置いているらしく、何をやっても大目に見てもらえるという噂は本当らしい。


だいたい、伊織さまのクラスだってホームルームがまだ終わっていない時間のはずだ。


どうしょう、絶対私のことを迎えにきたんだ。


うー、目立っちゃうよ。伊織さまったら。


結婚のことは内緒にするって今朝言ったばかりなのに。


「つむぎ、帰ろう」


さすがに不服そうに頬を膨らませて彼に歩みよったけど、綺麗な笑顔を向けられて一瞬ひるんだ。