うきうきが止まらない。
 晃と再会して、早一ヶ月が経った。

 僕は、晃達がオウスに着いた頃を見計らって手紙を書いた。内容は何度も読み返したはずなのに、緊張しすぎていたからか、いまいち覚えてない。晃からの返事の内容を見るに、失礼な内容ではなかったみたいだけど、おそらく当たり障りのないことを書いたんだと思う。

 不甲斐ない自分にため息を零したりもしたけど、晃と繋がりを持てたことがすごく嬉しくて、毎日が活き活きしていた。
 こんな気分は初めてだ。

 今まで何かを知ることだけが僕の心を湧かせるものだと思ってたけど、それ以上に興奮するものがあるだなんて思ってもみなかった。

 今日は、オウスに出向く手はずになっている。
 表向きは火恋の様子を見にってことになってるけど、隙を見て晃をデートに誘えたら良いな。

 僕は鏡の前で何度も髪を梳かしたり、服のチェックをしたりした。裾を引っ張って直し、赤と黒のチェック柄のジレに出来たごく僅かなしわを手で擦って取る。

 鏡なんて条国にきてから見向きもしなかった。部屋に鏡もなかったし。でも、オウスに行けることになってから、急いで買ったんだ。晃にだらしないかっこうは見せたくない。

「あ~。なんか、そわそわするなぁ」

 僕は腹の中を這うむずむずを取り払いたくて、ぎゅっと腹を丸めた。

「ううっ。緊張する」

 すごく楽しみなのに、すごく緊張してしまう。鏡の中の自分の顔が強張ってる。僕は強く頬を擦って無理矢理笑った。

「よしっ! 行くぞ!」

 気合を入れて部屋を出た。
 廊下を歩いていると、緊張もほんの少しだけほぐれてきた。お気に入りの小石が敷き詰められた庭――枯山水というらしい。を眺めながら縁側を進むと、ほっと息が洩れた。

 ふと視線を前方に戻すと、前から浅黒い肌をした、がっしりとした体格の男が歩いてきていた。
かなり背が高い。

「ムガイだ」