* * *

 一時間後、僕は大広間へ向った。
 起きてすぐは身体に力が入りづらくて、歩くのがしんどかったけど、廊下を歩き回っていたらだいぶ慣れた。

 ただ、三日も寝ていただけあって、筋肉が衰えているのか、すぐに疲れて眠くなってしまった。これが終わったら、さっさと寝よう。

 大広間へ着くと、皆もう既に横一列に並んで座っていた。
 僕に気づくと、わざわざ振り返って、燗海さんが優しい笑みを送ってくれた。

「やあ、レテラ。調子はどうじゃな?」
「大丈夫です。ちょっと疲れてますけど」
「そうか。それは良かった。終わったらゆっくり休みなさい」
「はい。ありがとうございます」

 お礼を言うと燗海さんは向き直って、今度はアイシャさんが振り返った。
 アイシャさんは僕を見ると、少しだけばつの悪そうな表情を浮かべた。多分、アイシャさんが誰にも見せないようにしてた弱さを僕が見てしまったから、気まずいんだろうな。
 僕がどうしようかと思っていると、アイシャさんはにこりと笑んだ。

「レテラ。無事で良かったわ」

 その声音はすごく穏やかで、優しいものだった。
 本気で言ってくれたのが伝わってきて、僕は思わず綻んだ。

 アイシャさんは僕に笑みを返して、向き直った。
 その背に小さく頭を下げて、一番右端にいた陽空の隣へ座った。

「よう。レテラ。御互い大変だったな」
「だな」

 陽空の軽口に相槌を打って、僕はにやっと笑う。

「血、きれいに落ちてるじゃん」
「ああ。起きたらきれいさっぱりだった」

 ちょっとからかうつもりだったのに、陽空は乗ってこなかった。
 つまんないの、と思いつつ、僕は会話の流れに乗った。