「おそらく、自分の細胞が組み込まれた魔王に操相の呪符が入ることによって、魔王と繋がってしまったんだ」

「それは少しおかしくはないかしら? 操相の呪符が魔王にあったとしても、魔竜に影響を与えるとは思えないけど。だって魔竜に呪符は入ってないでしょ?」

 アイシャさんの問いかけはもっともだ。操相の呪符には対になる呪符がいるはずなんだから。

「いいや。ただ一匹だけ、おったはずじゃぞ。昔な」

 僕は確信を得たような声音に、燗海さんを振り返った。それは僕だけじゃない。そして、ある考えに結びついたのも。

「いたな。昔、殺し損ねた、あたしの獲物が」

 ヒナタ嬢が不敵に笑んだ。

「そう。そいつだったんだよ。たった一匹生き残った魔竜はね。そのことに紅説様がお気づきになり、ある程度の確信の元、操相の呪符を発動させ、見事魔竜を操ることに成功したってわけさ」
「すごい」

 僕は思わず呟いていた。皆も、そう思っていたに違いない。心底安堵する息がそこかしこから漏れていたのだから。これで、魔竜の脅威は去った。人類は助かったのだ。

 晃の命をとした願いも成就されたんだ。
 僕は、嬉しさとほんの少しの切なさで満たされた。

 王を見やると、安堵の表情を浮かべていた。
 だから、僕らはてっきり王も同じ想いなのだと思っていた。僕らの前で渋面を作るマル以外は――。