* * *

 僕は火恋を連れて研究室に戻った。
 その際素早く部屋を見回したけど、王とあかるはまだ戻っていなかった。走ってきた僕達に気がついて、マルが不思議そうに僕らを見る。
 僕は夢遠慮にマルに投げつけるように言った。

「マル! こいつに魔王の扱いづらさについて教えてやってくれ!」

 マルは訝しがることもなく、「良いよ」と嬉々として頷いた。さすがマル。こういうときは話が早くて助かる。

「今回の第三の魔王は、二千人の能力者と二千二百人の非能力者で出来ているんだ。四千二百人の魂があるってことは、四千二百人の意思があるってことで、その中から能力者を識別し、自分がなんの能力を引き出したいか明確にして二千人の中から選ばなきゃならない」

 マルはいったん区切って「そりゃ大変だろ?」と投げかけてみせたが、火恋の反応を見ずにすぐに話を戻した。

「しかもあかるは非能力者で、彼女の世界に能力者は存在しなかった。どんな能力があって、どう使うのかも殆ど解らないんだよ。能力を扱うってことは、その能力がどういう風に発動するのか理解してなきゃいけない。その辺は能力者の殆どが勘で分かってるもんだしね。例えば、水を出す能力者なら、空気中に水分が含まれていることを本能的に知っているし、水を操るなら、それは作り出すのではなく、念動力の一種なのだと自覚していたりね。でも、能力がない者はその勘そのものがないから、どうすれば良いのかいまいちよく分からないんだよ」

「だからって……」
 火恋は憤りを見せた。