「女中さん。渋々だったけど、答えてくれた。アイシャさんにも、陽空さんにも、マルさんにも……誰に聞いても教えてくれなかったから……」
陽空が言わなかった?
僕は意外な心持で聞いていた。あの女好きが女の子に頼まれても言わないなんて……。まあ、あかるが哀しむっていうのが見えてたからかも知れないけど。っていうか、友情故というよりは、そっちの方が濃厚か。
「あたし、なんでこんなにダメなんだろう。何にも出来ない」
あかるは自分を卑下するように呟いた。
「そんなことを言うな。そんなことはない」
落ち着いた口調だったが、王の表情には僅かに必死さが滲み出ていた。
あかるは、黙ったまま何も言わなかった。しばらく王は沈んでいる彼女を見つめていたけど、不意に優しく抱きしめた。
「少なくとも、私にはあかるが必要だ。聖女としてのお前ではなく、あかる自身が必要なんだ」
あかるはゆっくりと王の背中に腕を回した。背中の布が引き寄せられてシワになった。あかるの表情は見えない。泣いてるかどうかもよく分からない。
だけど、僕は静かに涙を流しているんだと思った。



