「お前、何しにここにきたんだ?」
「きてはいけませんの?」
平然と返されて、動揺が走る。
「いや、そういうわけじゃないけど」
慌ててしまって、声が上ずった。
僕だって、火恋に逢いたかったわけだし。確かに、きちゃいけないことはない。
「一人前になるまで逢わないみたいなこと言ってたじゃん」
「それは、レテラにはでしょ」
「……まあ」
「まさか。自分に逢いに来たなんて自惚れてるわけじゃないですわよね?」
火恋は面白がるみたいに頬を持ち上げる。
「まさか。そんなわけないだろ」
僕は思わず嘘をついた。
僕に逢いに来たとは思わなかったけど、それも含まれてたら良いなとは思っていた。だって、火恋を幼い頃から知ってるんだ。ちょっとは期待くらいするだろ。それを、そんな、小バカにした感じで言わなくても良いのに。
拗ねた気分を隠して、僕は大人ぶって平然とした態度をとってみせた。
「ですわよね」
火恋は鼻で笑って、前に向き直った。
(こいつ、可愛くねぇな!)
昔から生意気なとこがあったけど、こんなに悪化してるとはな。やっぱり、僕がついてた方が良かったんじゃないか? この、マセガキめ!
苦々しく思っていると、マルが声高に叫んだ。
「出来た!」
「速いな」
僕は独りごちて椅子から立つと、マルと王の許へ向う。途中首だけで振り返ったけど、火恋はついて来なかった。
あかるも瞑想を止めて二人の許へと向ってくる。ちょうど合流するかたちで、僕とあかるは二人の前に立った。



