「それで、どうしたんだ?」
 紅説王が尋ねた。
(王が呼んだんじゃないのか?)

「ちょっと、聖女とやらを見たくなりまして」
 険を含む声音で言って、火恋はあかるを見据えた。
「そこの娘がそうですか?」
「そうだよ」

 マルが答えて、火恋は、「ふ~ん」と呟いて、あかるをまじまじと見る。戸惑うあかるを庇うように、紅説王がさりげなくあかるをその背に隠した。

「火恋、良かったら今晩一緒に食事でもどうだ? もちろん、マルも一緒に」
「いえ。僕は研究したいので。もう少し、あかるに合った修行法があるかも知れないので、それを調べたいんです。だから結構です」
(マル。お前……)
 僕は嘆息した。久しぶりに会った妹より研究か。

「マル。分からないでもないけど、久しぶりに会ったんだから食事ぐらいしてやれよ」
 僕が軽く叱責すると、火恋は、「良いですわ。別に」と大して気にしてないように言って、紅説王に尋ねた。

「しばらく滞在しようと思ってるんですが、よろしいですか?」
「ああ。歓迎する」

 王は嬉しそうに言って、火恋は踵を返した。その刹那、ふと火恋と目が合った。その瞳が、何故だが僕を責めているような気がした。

(なんだ?)

 僕は心の中で独りごちる。なんとなく、不安が過ぎる。火恋に逢えたのは嬉しいけど、火恋はいったい何をしにここに来たのだろう。