レテラ・ロ・ルシュアールの書簡


 * * *

 それから一ヶ月も経たない内に会議が開かれた。なんでも、魔王の器となる者を探す手立てが整ったらしい。

 例の能力者のことだろうなとわくわくしながら僕は大広間へ向った。
 縁側を歩いていると、空の色が沈んできているのに気がついた。

(もうすぐ夕暮れか)

 空に向けた視線を戻すと、開け放たれた大広間に皆が座っているのが見えた。横一列に並んでそれぞれ座っている姿を見ると、座り方にも性格が出るもんだなとふと思う。

 陽空はあぐらを掻いて背筋を伸ばしているかと思うと、ゆらゆらと動いてみたり。隣にいるアイシャさんは凛と背筋を伸ばして正座をしている。たまに陽空を注意して、呆れながらも楽しそうに笑ってるし、陽空の反対側にいる燗海さんは正座をしていても、アイシャさんとは違って少し背中が丸い。年のせいというわけではなさそうだ。

 その隣にいるムガイは、大きな体をしゃんと伸ばして、これまた正座をしている。股が少し開いていて、でかい図体と相まって、偉そうに見える。良い言い方をするなら、屈強な兵士のようだ。

 ヒナタ嬢はあぐらを掻いて、頬杖をつき、顔を外にそむけている。ここからじゃ表情は見えないけど、どうせ退屈そうなんだろう。

 皆の前に正座していたマルと目が合って、僕は手を振った。マルは膝の上で両手で抱えるようにして持っていた風呂敷包みから片手を離して手をふり返した。

 皆が一斉に振り返る。注視されて僕は一瞬ぎょっとした。へらっと苦笑を送りながら、駆け足で大広間へ向う。

「また僕が最後か」
「レテラは会議のときは、大体最後だからなぁ」

 独り言を拾って、陽空が茶化した。僕はわざとむすっとした表情を作って陽空を睨んだけど、殿下に鋭い目つきで睨まれてしまった。

(はいはい。早く席に着けってことね)

 僕は心の中で皮肉を返して、アイシャさんの隣へ座った。それを確認して、殿下が上段の間の薄い天幕を上げた。凛とした佇まいの王が現れる。

(王も待たせちゃってたのか)
 気まずさから少し顔を下げると、マルが口を開いた。

「これの器についてだけど」