たぶん、全員がそう落胆していると思っていた。なのに、唯織と仲の良い三人の声だけが唯織をまだ応援していた。いくら英雄のように動けると言っても四人を抜かすのは無理だろう。唯織でも抜かせなかったら俺だけのせいにはならない気がして、唯織の走っている方を見た。

「いっおりー!後一人だよー!」

「頑張れー!」

唯織の相手がマネージャーであった事が幸いしたのかもしれない。ゴールまで後一人という所まで相手に詰め寄っていた。昔の事を思い出したのに、唯織の実力を忘れていたんだ。
普通の人が勝てる訳がなかった。唯織はその道を仕事にしている人たちから声が掛かるほどの実力の持ち主だ。思い出してから身のこなしを見ても、何も変わっていない。勝てない訳がなかった。