「ぽー⁉︎」


すっとんきょうな声を上げたのは、響子だ。


【し】で始まるはずだったから【修正液】を取り出すはずだった。


それが【ぽ】からだなんて__。


「ちょっと!そんなのズルいじゃない!」


教室の隅、スピーカーに向かって怒鳴る響子。


急に文字が変わってもらっては困る。しかも響子は1番バッターだから余計だ。


『今後、ゲームの始めの言葉はこちらで選びます』


「だからズルい!」


『不正をしていた自分たちを棚に上げて?しりとりとは、本来こうあるべきです』


「そんな__」


ぐっと言葉に詰まるのは、響子だけじゃない。


確かにしりとりは、あらかじめ言葉が分かっているわけじゃない。


返す言葉もなく、おし黙る。


「ルールは覆らないんだから、急いだほうがよくないか?」


そう言ったのは、新田くんだった。


もうしりとりゲームは始まっている。


時間は刻一刻と進んでいるんだ、急がないと。


「でも【ぽ】とかなくない⁉︎」


未だ怒っている響子は、ぷりぷりと怒りながら教室内を見回す。


でもすぐに教室を飛び出していった。


その確かな足取りは、きっと思いついたんだ。


行き先は『職員室』で、あるものに飛びついた__。


「ポット!」


『クリアです』